薩摩切子が伝統的工芸品ではない理由について
まずは、
「伝統工芸品」と「伝統 "的" 工芸品」
これらの指定を受けている商品がどういったものなのか、
小難しい言葉で書かれているので誤解されている点もあると思います。
少しわかりやすく解説してみたいと思います。
「伝統工芸品」とは、古くから使われている一般的な呼称で、
各地方自治体などが「○○県伝統工芸品」として認定しているものもあります。
伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49年5月25日、法律第57号)
に基づき、経済産業大臣が指定するものを「全国伝統的工芸品」といいます。
法律の概要としては、
① 一般的に日常生活に用いられるもの。
② 主に手作業により製造されるもの。
③ 伝統的、およそ100年以上継続された技法によって製造されているもの。
④ 伝統的、およそ100年以上継続され、使用されてきた原材料で製造されているもの。
⑤ 一定の地域で産業として成立しているもの。
とされており、
その種類は、
織物、染色品、陶磁器、漆器、木工品、竹工品、金工品、仏壇、仏具、和紙、
文具、石工品、人形、郷土玩具、扇子、団扇、和傘、提灯、和楽器、神祇調度、
慶弔用品、工芸用具、工芸材料などがあります。
「一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会」について
「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づき、
産業の振興を図るための中核的機関として、
国、地方公共団体、産地組合及び団体等の出捐等により設立された財団法人です。
「伝統マーク」「伝統証紙」とは、
「一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会」作成の規程に従い、
宣伝について
統一したイメージで消費者にアピールするためのものです。
つまり「伝統工芸品」は一般的な呼称であり、
認定された「○○県伝統工芸品」などと「伝統的工芸品」の違いは、
どの団体に指定もしくは認定されているかというだけの違いです。
また、「伝統的工芸品」には
「的」がつきます。
これは、「伝統的工芸品」に指定されている工芸品の中には、
道具や材料を変えて工業的な大量生産を行ったものもあるので、
厳密に「伝統」と定義することは難しくあくまで
「的」、
「伝統"的"」としているのです。
また、「伝統的工芸品」のウェブサイトを見ると「伝統工芸青山スクエア」という販売サイトです。
要するに「経済産業大臣指定」「伝統マーク」「伝統証紙」という
付加価値をつけて売るという「組合」などよくする販売方法のひとつともとれます。
この「伝統マーク」や「伝統証紙」があるから優れているというわけではなく、
あくまで
統一したイメージで消費者にアピールするためのものというわけです。
また、この指定に漏れる工芸品も多々あります。
「経済産業大臣指定伝統的工芸品」のリストを見てみましょう。
東京都の項に江戸切子(その他工芸品、2002年)とあります。
しかし、大阪府、鹿児島県ともに「薩摩切子」はありません。
これはいったいどういうことでしょう。
冒頭でご紹介した伝統的工芸品産業の振興に関する法律ですが、
薩摩切子の歴史をさかのぼると
③ 伝統的、およそ100年以上継続された技法によって製造されているもの。
という定義に外れます。
薩摩切子は、一度産業として
途絶えていますので
100年以上継続されているという項目に漏れるのです。
また、薩摩切子は
⑤ 一定の地域で産業として成立しているもの。
これも定義に外れます。
薩摩切子は、
薩摩でつくられた切子という地域産業としての意味ではなく、
「色被せ」や「カット」の
技法をいうのです。
何故なら、薩摩切子は、古くは薩摩で作られてきましたが、
一旦途絶えた経緯があります。
そして、
大阪のカメイガラスを中心に復刻され、
その後、ようやくその復刻された技法が薩摩に伝わり
鹿児島県の伝統工芸品指定を受けたのです。
従って
薩摩切子の伝統的な卓越した職人の多くはカメイガラスから出た今も大阪に居り、
大阪こそが薩摩切子の本場ともいえるのです。
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